2020年 05月 04日
ナショナリズムの時代 |
最近の日本のスポーツ界を見るとある変化が起き
ています。 例えば 日本人で初めて世界ランキング
一位となった大坂なおみ選手 陸上のサニーブラウ
ン選手 先日歴史的勝利を収めたラグビー日本代表
リーチマイケル選手。簡単にいうと日本人ぽくない
もしくは日本人ではない選手が活躍しています。 も
ちろんそれが悪いというわけではありません。 彼ら
が活躍したニュースにほとんどの日本人は喜んでい
ます。 しかしながらその一方で彼らは日本人なの
か? という声が聞こえるのも事実です。 そ
もそも日本人とは一体何なのでしょうか?
この弁論の目的は 移民と共存できる日本社会
の形成のため グローバル時代の日本人の再定義を
行うことにあります。
なぜ今 日本人の再定義が必要なのか。
それは現代がグローバル化の時代であると同時
にナショナリズムの時代でもあるからです。 今 世
界を見てみるとアメリカでの白人至上主義 EU での
反移民を訴える極右政党の台頭などナショナリズム
の高まりで社会の分断が広がっています。 このナシ
ョナリズムが高まった地域では 人々が人種や宗教
によって対立。リンチ 強姦 麻薬さらにはテロなど
の温床となり その治安の悪化がさらにお互いの憎
しみを高めあう 負のスパイラルに陥っています。ナ
ショナリズムが現代社会の難問の一つであることは
間違いありません。
ここで注目すべき点はグローバル化が進んだこ
とでナショナリズムという問題に大きな変化が起こ
ったことです。
グローバル化する以前では ナショナリズムは
国対国 もしくは宗主国と植民地 といった形で基
本的にナショナリズムのベクトルは国の外側に向い
ていました。
一方、最近世界で主流なのは国の内部で発生するナ
ショナリズムです。
なぜナショナリズムのベクトルが内側に向いてい
るのでしょうか。 それはグローバル化によって人が
国境を超え移動しやすくなったからです。 グローバ
ル化以前は人の移動が少なく国の中では同じ人種の
人間が固まっていました。しかし グローバル化で異
なった民族と接触し また共存する機会が爆発的に
増えました。これにより、人種や宗教の違いにより民
族意識が刺激されやすくなり ナショナリズムによ
る対立を起こしやすくしているのです。
EU はこのような状況下で移民を国民として受け入れ
ようとし、そして失敗したのです。
日本もこのグローバル化の波を逃れることはで
きません。半年前に入管法の改定が行われました。
この法案の目的は少子高齢化が進む日本において労
働力不足を解消するため外国人労働者の数を増やす
ことにあります。 この前提がある以上 日本でも外
国人労働者が増えることは避けられません。これから
移民が増えていく日本で欧米のように移民と日本人
の間でナショナリズムが高まり社会が分断される可
能性は否定できません。
今後の日本は移民と共生社会を築く方法を考
えていく必要があります。
ではどのようにして共存を目指していくのか。
EU は共存のため 移民に対し EU の基本的価値観の
理解 言語能力の向上 職業訓練へのアクセスをし
やすくするなどの政策を打ちました。 言語能力や職
業訓練へのアクセスなど制度面での対策は正しいと
思います。 日本も先行事例を参考にし 取り組んで
いく必要があります。 しかしこれらの政策を打ちな
がらなぜ今 EU ではナショナリズムが高まっている
のか。 問題なのは移民ではなく自国民に対する対策
を怠ったことにあります。移民が共存していくために
はその国の国民としてのアイデンティティを持ち
またそれが周囲から受け入れられなければなりませ
ん。 実際ある組織に所属しているというアイデンテ
ィティを持つためにはその組織の基本的な価値観を
もつ必要があります。それを移民に理解させる政策は
正しいと思います。 しかしそれと同時にもともとの
国民が移民を受け入れ 同じ民族だという意識を持
たなければなりません。
では民族意識の基盤となっているものは何か。 文
化や共通の価値観の共有も重要な基盤ではあります。
ですが社会学的に人種や血統という要素の影響力は
大きいと言われています。人が他人と共に組織を形成
するには 何かを共有している必要があります。遺伝
的な身体的特徴や 宗教や思想などの精神的なもの
文化や言語など様々なものが組織を形成するうえで
役立ちます。 その中でも特に人種や血統は 肌の色
顔立ち 髪の色など非常にわかりやすい違いをもた
らします。 第一印象は人の思考に大きな影響を与え
ます。 すぐに仲間だという印象を与えられる点こそ
が人種や血統に大きな影響力を与えているのです。
こうした心理学的理由から人の移動が少ない時代に
多くの国で人種や血統が暗黙の前提になっていたこ
とは極めて自然なことではあります。
しかし他の民族との共存を避けることができな
い現代に人種や血統に頼った民族意識ではナショナ
リズムによる社会の分断を招くだけです。今、日本に
おいては、その問題は起こってないではないかという
人もいるかもしれません。ナショナリズムは一度高ま
り分断が起きてしまうと修復は極めて困難です。 事
前に手を打ってこそ解決可能な問題なのです。
この人種に基づく国民意識は日本にも当然存在し
ます。しかし日本人の定義を今のまま人種に置きすぎ
てはグローバル化が進む現代において移民と共存し
平等な 安定した日本社会を形成することなどでき
ません。 人種に関係がない日本人の定義を考え そ
れに転換していく必要があります。
それでは 移民と共存できる日本人の定義とは
何か? 私はグローバル時代の新たな日本人の定義
として人種や血統ではなく日本語を定義の中心に置
くべきと訴えます。日本語を定義の中心に置くことは
二つのメリットがあります。 一つは 言語というも
のは人種と違って後天的であることです.人種を中心
にした場合の欠点は人種とは先天的なもので変更で
きない点です。 それに対して言語なら努力によっ
ての改善が可能です。 また日本で生まれる移民の次
世代は日本語を生まれた時から学べるため 周囲が
日本語を日本人の中心的定義をみなしていれば移民
の次世代は生粋の日本人として受け入れられ社会の
分断を次世代まで残す可能性を低くできます。 また
日本語は他の候補と比べすぐわかるという点が挙げ
られます。 すぐわかるものが私たちの印象に大きな
影響力を持つことは先ほど述べたとおりです。 日本
語が 他の民族が全然勉強しなくても 三四割わか
るといった言語ではありません。 言語学的に見ても
どの語族に属しているかよくわからないかなり変わ
った言語です。 その独自性をアイデンティティとす
ることには具体的な説得力があります。 他の候補と
比べてみてみましょう。文化の場合 文化は人のアイ
デンティティに強く結びついています。 ある程度の
日本文化を共有は可能でしょうが ですがこれを捨
てることは難しいでしょう。 法的な国籍や 生まれ
た場所が日本という線もありますがこれは外部から
わかりにくく第一印象が人種や言語と比べてかなり
弱いです。 以上のような点から日本語を日本人の定
義の中心とすることには説得力があります。
何度も強調しますがグローバル化が進む現在
これまでの人種や血統を中心とする日本の定義は時
代遅れで私たちに破滅をもたらすだけです。 新たな
時代の日本人とは何か この問いを考えていくこと
こそがこのナショナリズムの時代を生きる私たちに
求められていることなのです。 ご清聴ありがとうござい
ています。 例えば 日本人で初めて世界ランキング
一位となった大坂なおみ選手 陸上のサニーブラウ
ン選手 先日歴史的勝利を収めたラグビー日本代表
リーチマイケル選手。簡単にいうと日本人ぽくない
もしくは日本人ではない選手が活躍しています。 も
ちろんそれが悪いというわけではありません。 彼ら
が活躍したニュースにほとんどの日本人は喜んでい
ます。 しかしながらその一方で彼らは日本人なの
か? という声が聞こえるのも事実です。 そ
もそも日本人とは一体何なのでしょうか?
この弁論の目的は 移民と共存できる日本社会
の形成のため グローバル時代の日本人の再定義を
行うことにあります。
なぜ今 日本人の再定義が必要なのか。
それは現代がグローバル化の時代であると同時
にナショナリズムの時代でもあるからです。 今 世
界を見てみるとアメリカでの白人至上主義 EU での
反移民を訴える極右政党の台頭などナショナリズム
の高まりで社会の分断が広がっています。 このナシ
ョナリズムが高まった地域では 人々が人種や宗教
によって対立。リンチ 強姦 麻薬さらにはテロなど
の温床となり その治安の悪化がさらにお互いの憎
しみを高めあう 負のスパイラルに陥っています。ナ
ショナリズムが現代社会の難問の一つであることは
間違いありません。
ここで注目すべき点はグローバル化が進んだこ
とでナショナリズムという問題に大きな変化が起こ
ったことです。
グローバル化する以前では ナショナリズムは
国対国 もしくは宗主国と植民地 といった形で基
本的にナショナリズムのベクトルは国の外側に向い
ていました。
一方、最近世界で主流なのは国の内部で発生するナ
ショナリズムです。
なぜナショナリズムのベクトルが内側に向いてい
るのでしょうか。 それはグローバル化によって人が
国境を超え移動しやすくなったからです。 グローバ
ル化以前は人の移動が少なく国の中では同じ人種の
人間が固まっていました。しかし グローバル化で異
なった民族と接触し また共存する機会が爆発的に
増えました。これにより、人種や宗教の違いにより民
族意識が刺激されやすくなり ナショナリズムによ
る対立を起こしやすくしているのです。
EU はこのような状況下で移民を国民として受け入れ
ようとし、そして失敗したのです。
日本もこのグローバル化の波を逃れることはで
きません。半年前に入管法の改定が行われました。
この法案の目的は少子高齢化が進む日本において労
働力不足を解消するため外国人労働者の数を増やす
ことにあります。 この前提がある以上 日本でも外
国人労働者が増えることは避けられません。これから
移民が増えていく日本で欧米のように移民と日本人
の間でナショナリズムが高まり社会が分断される可
能性は否定できません。
今後の日本は移民と共生社会を築く方法を考
えていく必要があります。
ではどのようにして共存を目指していくのか。
EU は共存のため 移民に対し EU の基本的価値観の
理解 言語能力の向上 職業訓練へのアクセスをし
やすくするなどの政策を打ちました。 言語能力や職
業訓練へのアクセスなど制度面での対策は正しいと
思います。 日本も先行事例を参考にし 取り組んで
いく必要があります。 しかしこれらの政策を打ちな
がらなぜ今 EU ではナショナリズムが高まっている
のか。 問題なのは移民ではなく自国民に対する対策
を怠ったことにあります。移民が共存していくために
はその国の国民としてのアイデンティティを持ち
またそれが周囲から受け入れられなければなりませ
ん。 実際ある組織に所属しているというアイデンテ
ィティを持つためにはその組織の基本的な価値観を
もつ必要があります。それを移民に理解させる政策は
正しいと思います。 しかしそれと同時にもともとの
国民が移民を受け入れ 同じ民族だという意識を持
たなければなりません。
では民族意識の基盤となっているものは何か。 文
化や共通の価値観の共有も重要な基盤ではあります。
ですが社会学的に人種や血統という要素の影響力は
大きいと言われています。人が他人と共に組織を形成
するには 何かを共有している必要があります。遺伝
的な身体的特徴や 宗教や思想などの精神的なもの
文化や言語など様々なものが組織を形成するうえで
役立ちます。 その中でも特に人種や血統は 肌の色
顔立ち 髪の色など非常にわかりやすい違いをもた
らします。 第一印象は人の思考に大きな影響を与え
ます。 すぐに仲間だという印象を与えられる点こそ
が人種や血統に大きな影響力を与えているのです。
こうした心理学的理由から人の移動が少ない時代に
多くの国で人種や血統が暗黙の前提になっていたこ
とは極めて自然なことではあります。
しかし他の民族との共存を避けることができな
い現代に人種や血統に頼った民族意識ではナショナ
リズムによる社会の分断を招くだけです。今、日本に
おいては、その問題は起こってないではないかという
人もいるかもしれません。ナショナリズムは一度高ま
り分断が起きてしまうと修復は極めて困難です。 事
前に手を打ってこそ解決可能な問題なのです。
この人種に基づく国民意識は日本にも当然存在し
ます。しかし日本人の定義を今のまま人種に置きすぎ
てはグローバル化が進む現代において移民と共存し
平等な 安定した日本社会を形成することなどでき
ません。 人種に関係がない日本人の定義を考え そ
れに転換していく必要があります。
それでは 移民と共存できる日本人の定義とは
何か? 私はグローバル時代の新たな日本人の定義
として人種や血統ではなく日本語を定義の中心に置
くべきと訴えます。日本語を定義の中心に置くことは
二つのメリットがあります。 一つは 言語というも
のは人種と違って後天的であることです.人種を中心
にした場合の欠点は人種とは先天的なもので変更で
きない点です。 それに対して言語なら努力によっ
ての改善が可能です。 また日本で生まれる移民の次
世代は日本語を生まれた時から学べるため 周囲が
日本語を日本人の中心的定義をみなしていれば移民
の次世代は生粋の日本人として受け入れられ社会の
分断を次世代まで残す可能性を低くできます。 また
日本語は他の候補と比べすぐわかるという点が挙げ
られます。 すぐわかるものが私たちの印象に大きな
影響力を持つことは先ほど述べたとおりです。 日本
語が 他の民族が全然勉強しなくても 三四割わか
るといった言語ではありません。 言語学的に見ても
どの語族に属しているかよくわからないかなり変わ
った言語です。 その独自性をアイデンティティとす
ることには具体的な説得力があります。 他の候補と
比べてみてみましょう。文化の場合 文化は人のアイ
デンティティに強く結びついています。 ある程度の
日本文化を共有は可能でしょうが ですがこれを捨
てることは難しいでしょう。 法的な国籍や 生まれ
た場所が日本という線もありますがこれは外部から
わかりにくく第一印象が人種や言語と比べてかなり
弱いです。 以上のような点から日本語を日本人の定
義の中心とすることには説得力があります。
何度も強調しますがグローバル化が進む現在
これまでの人種や血統を中心とする日本の定義は時
代遅れで私たちに破滅をもたらすだけです。 新たな
時代の日本人とは何か この問いを考えていくこと
こそがこのナショナリズムの時代を生きる私たちに
求められていることなのです。 ご清聴ありがとうござい
ました。
by yuben2012
| 2020-05-04 10:35
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