第26回桜門杯争奪戦全日本学生弁論大会「保守革命論」 |
現在、我々が住んでいるこの世界は、とても不安定で、一歩先の未来も見えません。コロナ禍、ウクライナ侵攻などによる影響は言うまでもなく、アメリカと中国の対立は、もはや「新冷戦」ではなく、「新しい戦前」だと呼ばれるくらいの危機になっています。このような対立は、世界をもっと極端にしています。2013年、中国の「一帯一路」計画に対して、当時副大統領だった、アメリカのバイデンは、「アメリカの反対勢力にお金をかけるのは愚かなこと」だと言ったこともあります。世界は、明確に二つに分けられているのです。ここで、日本という国は、道に迷っています。
本格的に入る前に、こういう疑問を持つ方がいらっしゃると思います。「お前は韓国人だろう!なぜ偉そうに日本のことを言ってるのか!」確かに、私は韓国人です。今のところはですね。ですが、私は日本という国が好きで、長期的には日本に帰化したいと思っています。ですが私は、自分が好きな日本という国が、不安定な未来を迎えるかもしれないということが、とても心配です。ここで私は、日本のために、日本はどうするべきでしょうか?という質問に答えたいと思います。
私が会った多くの日本人は、アメリカ側につくべきだと言いました。確かに、アメリカは日米同盟を結んでいる国家ですし、「普遍的価値を共有する」国ではありませんか?それと違って、中国は沖縄と尖閣諸島を狙っている我々の敵ではありませんか?確かにそうかもしれません。ですが、これはそんなに簡単に結論付けられる問題ではありません。
まず多くの日本人は中国が日本の行くべき道ではないと思うでしょう。ウイグル地域の少数民族弾圧はもちろん、国家による監視、表現の自由の抑圧など、中国を完全な「ディストピア」だと言うひともいます。ですが、中国は同時に、「改革開放」政策を通じて、たった30年で目覚ましい経済成長を達成し、国民の「自発的な愛国心」で国民の団結を成し遂げた国でもあります。
では、アメリカはどうでしょう?アメリカは確かに、誰も否定できない世界最強の国であり、「世界の警察官」として世界で自由と民主主義という二つの価値を守っている国です。ですが、その裏側を見てみると、すでにアメリカの地域コミュニティは麻薬で崩壊し、公教育の不備による国民の「愚民化」が進んでいます。アメリカのカリフォルニア州の場合、泥棒が頻発し、そして刑務所不足のため、日本円にして約14万円以下の万引きは軽犯罪として扱われます。果たしてこれこそが、日本の行くべき道なんでしょうか?
アメリカと中国は、それぞれ「極端な個人主義国家」と「極端な集団主義国家」です。それぞれ、大きな利点と欠点があります。同時に、そのどちらも「正解」とは言えません。つまり、アメリカの個人主義も中国の集団主義も日本のゆくべき道ではないのです。
日本の歴史は、「中庸」、つまり、中道を維持していました。日本は、外部の物事を受け入れると同時に、自分たちの文化を守ってきました。私は、この生き方を、これからも変える必要はないと思います。米中対立が激しくなったとしても、日本が歴史的に維持してきた「中庸」という価値を諦める必要はありません。むしろ、「中庸」という精神を維持するため、それを「第三の道」という日本のイデオロギーまで発展させていくべきではありませんか。
「第三の道」とは何でしょう?歴史的に、資本主義と共産主義の二元論から脱却して、新しい道を探そうとする試みは、多く存在していました。それを、新しい、三つ目のイデオロギーという意味で、「第三の位置」、あるいは「第三の道」と呼びます。第三の道には社会民主主義からファシズムに至るまで、色々な試みがありました。その全てが成功したわけではありませんが、二つの大きなイデオロギー、この場合にはアメリカと中国の間に、新しい「正解」を見つける努力は、存在するべきです。
ちなみに、アメリカの個人主義と中国の集団主義、日本はどちら寄りだと言えるでしょうか?ホフステッド指数という国民文化を測る指数があります。この指数では各国の集団主義と個人主義の強さも測っています。100点満点で、点数が高いほど個人主義が強いということになります。この指数でアメリカは91、中国は20点を記録しました。では、日本は個人主義的でしょうか、集団主義的でしょうか?正解は、46点。世界平均の45点に近い数値でした。つまり、日本は集団主義と個人主義の間で、よくバランスを取っている国なんです。そのため、日本は「第三の道」の実現に適任なのです。
ここで、こう思う方がいるかもしれません。「そんなにいい考えがあったら、自分の国でやったらいいんじゃないか!」ですが、皆さん、本当に韓国という国についてよく知っていらっしゃいますか?前述のホフステッド指数で、韓国の点数は何点だと思いますか?答えは、中国よりも低い、18点です。数値のように、韓国は中国よりも強い共同体主義、いや、全体主義国家で、私の夢を叶える国には全然適していません!
また、ある人々はこう思うかもしれません。「既に日本はアメリカと中国の間で中庸を保っている。なぜ『第三の道』のような新たな概念が必要なんだろう?」確かに、今まではそうだったかもしれません。ですが、今は「新しい戦前」なのです。そして、確実ではない未来に備えるために、アメリカも、中国も、できるだけ多くの国々を自分の方に引き込もうとするはずです。日本も、その例外ではないはずです。ただのなりゆきでは、日本もただ他の国々のように流されるだけです。
だからこそ、私は主張します。私たちに必要なのは、「保守革命」であると!「保守革命」とは何か?それは、「今の生き方を守るための、社会の根本的な変革」です。なかなかピンと来ないと思います。では、「明治維新」を思い出してみてください。
明治維新の「維新」という単語は、実はとても古い言葉です。維新を英語に訳せば、Restoration、つまり、「昔へ戻る」という意味です。「尊王攘夷」という言葉も古代中国から来た単語であり、内閣制度が作られる前までは、昔にあった太政大臣など、古い役職が復活し、権力を握りました。 明治維新の一番の動機は、私は「変化への恐れ」だったと思います。明治維新は、素早く変化する世界中で、「やられる前にやる」、いわゆる「先制的な改革」でした。それは、何よりも、「日本の生き方を守るため」でした。西欧諸国の植民地にならないため、彼らが日本を完全に変える前に、日本という国体を、日本人という精神を守るための改革。それが明治維新だったのです。明治維新を「革新」だと考えない日本人は、ほとんどいないのではないでしょうか。
「保守革命」は、「現代の明治維新」となるのです。
では、この「現代の明治維新」で私が成し遂げたい社会とは何でしょうか?私の理想社会は、お金持ちの人も、貧乏な人も、老いも若きも、男も女も、全ての人々が自分が社会の一員だという認識を持ちながらも、個人の個性を十分に発揮できる社会。北欧諸国のような、「社会コーポラティズム国家」を理想としています。日本の例としては、1970年代の「安定成長期」を思い出して見てください。
そのような国家を作り上げるのに、日本はすでに素晴らしい基盤を持っていると思います。それは、日本固有の文化である「和」と「迷惑」文化です。相手の領域を侵さず、社会共同体を尊重する考え方は、これからも大切に持ち続けるべきだと思います。私が掲げる保守革命、日本独自の「中庸」が実現する条件には、福祉国家のような政策や国民が、国家によって強制されることのなく、自らの国に愛着を持つこと。つまり、自然と「自発的な愛国心」を抱くことが必要です。
その「自発的な愛国心」をどのように引き出すべきでしょうか?そのため、国家が国民の最低限の福利厚生の責任を持つ、いわゆる「セーフティーネット」政策の強化を提案します。これは既に日本でも行われているものですが、その効果を国民が身近に感じられるための見直しが必要だと思います。自分の人生に責任を持ってくれる政府を、その国家を支持しない理由はないはずではありませんか?
そして、1970年代の「安定成長期」を思い出してみましょう。いわゆる「護送船団方式」と呼ばれる体制があったんじゃないですか?私はこれを一層発展させたいと思います。ここで私は、ドイツを参考にしたいと思います。ナチス・ドイツの経済政策からの反省から、ドイツは統制経済を避けながら、国民の福祉と産業の安全を同時に保てる経済体制を工夫しました。その結果、国家の経済への介入はなるべく控えるが、重要産業を少し「後押し」する体制を作り上げました。自由市場経済の柔軟性も、計画経済の産業安保も守れるこの考え方を、「社会的市場経済」と呼びます。
今までの話を聞いて来た皆さんは、私が言っている「社会的市場経済」、そして「保守革命」が決して新しい概念ではないということが分かったと思います。日本はすでに1960、70年代に素晴らしい前例を見せたことがあって、世界が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」だと称えるほどの正解を見せたことがありました。中道を貫きつつ、変化する世界に合わせて、前に進んできた日本の道。それが「第三の道」で、それが保守革命の精神であります。
皆さん、「未来」を守るために、「今」に進みましょう!
ご清聴ありがとうございました。

